~勝手に名曲紹介~ 人間椅子 「無情のスキャット」 30年目の最高傑作 おすすめ レビュー

今回みなさんにぜひ紹介したい曲はこれ

人間椅子 「無情のスキャット」

です!

2019年6月5日に発売された人間椅子の21枚目のアルバム「新青年」に収録されている名曲です。

この曲、ミュージックビデオが2019年5月14日にYouTubeにて先行公開され、1カ月ちょっと経った6月26日には100万回再生突破。

現在(2020年2月)では430万回を超える勢いです。

人間椅子ざっくりプロフィール

<メンバー>

和嶋慎治:Vocal&Guitar 1965年生まれ

鈴木研一:Vocal&Bass 1966年生まれ

ナカジマノブ:Vocal&Drums 1966年生まれ

1987年に高校の同級生だった和嶋慎治鈴木研一により結成。

ドラムに上館徳芳を向かい入れ、1989年テレビ番組「平成名物TVイカすバンド天国」に出演し評判を呼び、1990年7月に「人間失格」でメジャー・デビュー。インディーズ、メジャー復帰と紆余曲折しながら、数々の作品を発表。またドラムは上館徳芳、後藤マスヒロ、土屋巌などの凄腕ドラマー達を経て2004年に現在のメンバーナカジマノブが加入する。

2019年6月に通算21枚目となるオリジナルアルバム「新青年」を発表。2019年12月には通算5枚目のベストアルバム「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」を発表する。

人間椅子との出会い

僕の人間椅子との最初の出会いはやはり当時の人気番組であったイカ天ですが、当時バンドの存在は認識しながらも深く掘り下げてはいなかった。まだ10代前半だったし、あの文学的でおどろおどろしい世界観をしっかりと受け止められる器量が僕にはなかったと思う。

それでも特徴的なバンドなので作品が発売されればなんとなく耳には届いていた。そのくらいの距離感で僕は年を重ね、二十歳くらいにはがっつりサブカル青年になっていたので受け手としての準備は万端だった。

その時僕は人間椅子ではなくて筋肉少女帯というバンドの大ファンになっており、全作品擦り切れるように聞いていた。そんな折、1998年に筋少のボーカル大槻ケンヂ氏(以下オーケン)のソロプロジェクトUNDERGROUND SEARCHLIE名義で「スケキヨ」というアルバムが発売された。その中に「君は千手観音」という曲が収録されており、その曲はみうらじゅん、オーケン、人間椅子のコラボで作られていた。みうらさんとオーケンが大好きだった当時の僕には神コラボであり、そしてそこでやっと人間椅子ときちんと出会うこととなった。

その2年後みうらさんの発売した「とんまつりJAPAN」という書籍と連動したミュージックビデオの中に「とんまつりJAPAN」という曲とオーケン抜きバージョンの「君は千手観音」という曲が収録されており、どちらも人間椅子とのコラボ作品だったため、またそこでがっつり再会することになった。

人間椅子というジャンル

二十歳くらいにはどろどろのサブカル青年に堕ちていた僕は、ようやく人間椅子のメッセージを受け取れる人間になっていた。「人間椅子」というバンド名もイカ天出演時に演奏した「陰獣」も江戸川乱歩の作品からとられていることを理解できるようになったし、他の作品でも乱歩だけでなく太宰治や坂口安吾、芥川龍之介などのオマージュを受けていることもわかるようになり、より作品を楽しめるようになった。

その文学的要素こそが「人間椅子」というバンドの旨味であり、その要素とハードロックの融合が「人間椅子」の真骨頂である。おどろおどろしい文学的歌詞がブラックサバスやレインボー、ツェッペリンを彷彿とさせるハードロックサウンドに乗り、唯一無二の独特な音楽が出来上がる。しかもスリーピースでそれをやってのける。

かっこいいと言わざるを得ない。

もっと掘り下げると一言にハードロックだけでなくメタルやプログレの影響も色濃く入っており、斬新な曲構成にキャッチーで激しいリフ、そこに津軽弁の歌詞が乗りもはや文章では書き表せないジャンルである。「人間椅子調」と一つのジャンルとして確立させた方がいいかもしれない。

ルックスについては、デビュー時鈴木さんはねずみ男の様相をしていたが、今は頭を剃り袈裟を羽織り僧侶スタイルとなっている。和島さんは袴にポニーテールで侍スタイル、ドラムのノブさんはチンピラテキ屋スタイルで定着している。この日本特有のファッションも海外受けに貢献しているのだろう。

30年目に射す光

今回紹介している「無情のスキャット」も上記したように様々な音楽的要素が凝縮している。

イントロは1分超の開放弦を利用したアルペジオ。深く重くどんよりとした空気感をじわじわと広げ、そこからさらに重厚感のある低音にグリスを効かせたメインリフに移行して歌が始まる。

途中何度も別の曲が始まったかのような大胆な曲調変化がありながら、一曲を通して聴くとまとまりのある壮大な世界が出来上がる。8分を超える大作にも関わらず一切飽きさせない。

ギターソロも途中とラストに二度入り、キレッキレで滅茶苦茶かっこいい。

歌詞は鬱屈した主人公が神や仏に己の幸福を乞うのだが、曲が進み時が経つにつれ彼は達観し、最後には己でなくすべての人に光を乞うという、煩悩と悟りを描いたような作りになっている。

とにかく今回の曲で世界中からも多大な評価を得、一気に人間椅子の名が世界へとどろいた。

彼らは今まで30年間自分達の音楽を信じてやり続けてきた。日本の音楽シーンが移りゆく中で、アイドル全盛期も、打ち込み全盛期も、R&B全盛期も、HIPHOP全盛期もずっと人間椅子をやってきたのだ。そしてやっと時代が追いついた。和島さんがどっかで言っていた、48歳でやっと音楽一本で食べれるようになったと。そして今はやっと機材車が買えたそうだ。

人間椅子を見ていると自分も救われたような気がしてくる。

人生において華やかな舞台に立つこともなく、リア充とは程遠い厭世的な生活を送る自分を肯定してくれるような気持ちになる。

僕は音楽もだけれど人間椅子の生きざまが好きだ。その生きざまが結果的に今のこの人気を呼んだのだろう。世界中から彼らに射す光を見てとてもうれしく、誇らしく思う。

キャンパー ”ワジー”

オマケですが、ギターの和島さん(愛称ワジー)はキャンプ好きのれっきとしたキャンパーなのです。そこも含め彼という人間のことが僕は好きなのです。勝手に友達のような感覚でいます。

最近ワジーの個人YouTubeチャンネルが開設され、そこにソロキャンプ動画がアップされている。キャンプのゆっくりとした時間が淡々と流れるのみで、決して”映え”を狙ったものではない。そこに好感がもてるのだ。実にワジーらしい。人の好さが前面にあふれているとてもいい動画です。キャンパーで興味ある方はぜひのぞいてください。↓

まとめ

時代に認められずとも、自分を信じて生きてきた人間の生きざま、そして報いの光が射すさま、30年をかけて描かれる映画のような展開に深く感動を覚えました。

ハードロック好きの方、文学好きな方、まだ人間椅子未体験のすべての方、ぜひこの機会に一度お聞き下さい。

みなさんに新しい感動がまた一つ届きますように。