はじめに説明しておきますと、この「勝手に名曲紹介」というコーナーは個人的に好きなアーティストの好きな曲をただ紹介するコーナーです。音楽の好みというものは十人十色なので、どんな名曲でも全員の共感は得られないものですが、それでもこの記事が誰かの新しい音楽に触れるきっかけになればという思いで書いております。
今回紹介する曲はカノエラナさんの「恋する地縛霊」と「地縛霊に恋をした」の2曲です。これらの曲は2018年に発売された彼女のファーストフルアルバム『キョウカイセン』に収録されています。「恋する地縛霊」という曲はそれ以前にもミニアルバムやシングル曲としても発表されていますが、アンサーソングである「地縛霊に恋をした」と2曲連続で収録されているこのアルバムが聴き方としてはベストだと思います。このアルバムをメインに紹介させていただきます。
プロフィール
佐賀県出身、1995年12月4日生まれの24歳(2020年4月現在)
2015年よりTwitter上に30秒の弾き語り動画を投稿し始め、徐々に反響を呼び「30秒弾き語り動画の女王」と呼ばれるようになる。30秒の弾き語り曲は2年間で90曲以上となり、のちに「30秒ソング集」としてCD化される。2015年7月にインディーズデビューし、2016年8月にメジャーデビューとなる。無類のアニメ好き。
2018年ファーストフルアルバム「キョウカイセン」、2019年セカンドフルアルバム「盾と矛」発売。今月の22日(2020年4月22日)には初のアニソンカバーアルバム「尊い」~解き放たれし二次元歌集~が発売予定。
他、会場限定のものを含めたミニアルバムなど8枚ほどのCDをリリースしている。
Gibson J-45の似合う若きアーティスト
彼女がツイッターでブイブイ言わせてる時、その話題は聞いていて存在は知っていたものの、当時フォローしてがっつり追うこともなかったので楽曲に対する印象は正直そこまでなかった。僕がきちんと彼女を知ったのは3年ほど前YouTube上でミュージックビデオを見つけた時だ。楽曲は”おーい兄ちゃん”だった。パンチのある歌詞とアップチューンのロックサウンド、そしてなによりギブソンのJ-45をかき鳴らし歌う彼女の姿がとても様になっており、こんなにJ-45の似合う若いコがいるんだと驚いた。単純にたたずまいがかっこいい。これって狙ってできるもんじゃないから才能と言ってもいい。その激しいロックと裏腹にとてもコミカルな楽曲もあったりして音楽の幅の広さ、曲ごとに変わる歌声の多様さなどすぐにそのポテンシャルを見せつけられた。
秀逸な歌詞の世界観
本題に入りますが、今回紹介する曲は2018年に発売されたファーストフルアルバム『キョウカイセン』に収録されている「恋する地縛霊」と「地縛霊に恋をした」の2曲です。5曲目、6曲目と連続で収録されており、それぞれストーリー仕立てになっていて2曲セットで完結する構成になっています。前者の曲は地縛霊目線でのストーリーが進む。
~ある青年が暮らすマンションの一室に地縛霊がいた。それはその部屋で9年前に命を落とした女性の霊だ。地縛霊はその青年に恋をしてしまう。彼女は彼に気付いてほしくて部屋の電気を消してみたり、お風呂をのぞいたり、はたまた寝ている青年に金縛りをかけ、頬を撫でキスをする。だが近くにいるのにつながれない。それでも想いは止まらない~
というもの。目の前にいるのに生きている者と死んだ者の隔たりは大きく、その壁を越えられず苦悩するのだ。まさにアルバムタイトルの『キョウカイセン』だ。死者と生者の境界線がそこにある。しかし曲調は明るく、ジャジーだがアップテンポでノリノリ。軽快にスウィングするホーンに合わせコミカルな雰囲気で歌い上げる。聞いていてとても心地よい。次に後者の曲。前の曲とは反対に青年の目線でストーリーが進む。
~2カ月前に引っ越してきたマンション。最近左肩が異常に重い。そして謎の物音に床に落ちた黒い髪。不思議な現象が起きているがなぜか嫌な気分にならない。そしてその生活が続くうちに青年は地縛霊の存在に気付いてしまうのだ。地縛霊は気付かれていることに気付いておらず、変わらずに青年に寄り添う。そして青年もまた彼女に恋をするのだ。この世とあの世の、生者と死者との許されざる恋。青年は強くなる想いとともに苦しみを味わっていく。彼女の頬を伝う涙さえぬぐえないもどかしさに葛藤する。そして二人を分かつ境界線を前にある答えを出す~
という前曲よりさらに重く深いストーリーになっている。「恋する地縛霊」はスウィング・ジャズ風のアレンジだったが2曲目の「地縛霊に恋をした」はがっつりバラードだ。アコースティックギターとピアノを主軸に切ない音色のホーンが混ざる。それをバックに感情をこめて歌い上げる。ノリノリの前曲との歌声のギャップも聴きどころだ。
まとめ
今回は「恋する地縛霊」と「地縛霊に恋をした」の2曲を紹介しました。相反するアレンジと歌声のギャップ。そして秀逸な詩の世界観。物語性が強く、曲ごとに1人称が変化することで見えなかった互いの思いがわかる仕組み。かなり良くできた楽曲です。そして純粋に歌もうまい。今だと若い女性シンガーソングライターと言えばあいみょんあたりが巷を席巻しているが、その時代の歌姫に負けずとも劣らない実力を持ったアーティストであると思う。(※あいみょん否定派ではありません。彼女の歌も大好きです)そういうわけで近いうちにきっと頭一つ突き抜けてくる日が来ると思います。みなさんもぜひ一聴してみてはいかがでしょうか。
『キョウカイセン』というアルバムは上記の曲以外にも「サンビョウカン」「嘘つき」など名曲ぞろいでおすすめです。ベストアルバムレベルです。
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セカンドフルアルバム↓
アニソンカバーアルバム↓