今回は片頭痛・群発頭痛の治療薬の一つである「イミグランキット皮下注3mg」の紹介です。僕は片頭痛、群発頭痛両方とも既往があり発作時は基本的に内服薬で対応しています。ですが時々睡眠中に発作が始まり、目が覚めた時には発作がピークに達していて吐き気が強くて薬が飲めないことがあります。また仕事中などに薬を飲むタイミングを逃してしまい、気付いたら発作が強くなっていて手遅れの状態になることもめずらしくありません。その時は強烈な頭痛に身動きが取れず、そのまま嘔吐も始まり、大量の冷や汗にまみれ悪寒もしてとにかく最悪な状態です。当然薬を飲んでもすぐに吐いてしまうためどうしようもありません。そのような状態の時に適応となるのが今回の皮下注治療薬です。
治療薬の概要や実際の打ち方について紹介したいと思います。
目次
皮下注射とは
まず皮下注射とは何か?について説明します。
注射の方法には皮内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射と4つの種類があり、薬剤の目的により使い分けられます。皮下注射とは名前の通り皮下組織に薬剤を注入する方法です。
経口からの服薬は主に肝臓により初回通過効果という代謝を受けますが、注射の場合はこの代謝を受けないため少ない量で速く効果が現れます。静脈内注射が最も効果の出現が速く、次に筋肉内注射、皮下注射と徐々にゆるやかになります。皮内注射は治療ではなく主にアレルギー反応の検査などに使われるため少し役割が異なります。
イミグランキットの紹介
左側がイミグランキットのスターターパック(注射器)で右側が実際に注入する薬剤になります。基本的に注射器は病院(クリニック)で受け取り、薬剤は薬局で受け取ることになっているようで別々に案内されました。
スターターパックの中は本体のキットと練習用のカートリッジ、あとは頭痛の記録ノートと使用ガイドが入っています。
練習用カートリッジは名前通り注射を打つ練習用で、本物の薬剤を使わず針なしのカートリッジを装着して練習するようになっています。今回はこれを使った説明は行わず、実際に頭痛発作があった時に使用した時の画像を使い説明します。
上の画像が本体のペン型注入器の入ったキット、下の画像が実際に薬剤が入ったカートリッジです。
実際の使い方
①封緘(ふうかん)シールをはがす
まずカートリッジを装着したキットの蓋を開け、①の数字の方の封緘(ふうかん)シールをはがします。(②からでもいいですがわかりやすいように①から使った方が無難です)
②カートリッジの蓋を開ける
封緘シールをはがした方のカートリッジの蓋を開けます。
③ペン型注入器を取り出す
次にペン型注入器を取り出します。この時に下部のペン先に白い棒が出ていないことを確認してください。もし出ていたら元のようにカチッと音がするまでキットの穴に押し込んでください。そうすると白い棒が引っ込みます。
④カートリッジに挿入し時計回り
取り出したペン型注入器を蓋を開けたカートリッジにまっすぐ挿入し、時計回り(右回り)に止まるまで回してください。
この時に押し込みながら回したり、強く回しすぎたりしないように注意してください。またこの一連の作業中は絶対に上部の青い注入ボタンを触らないようにしてください。途中で針が飛び出してしまい使えなくなります。
止まるまで回したらペン型注入器を取り出します。するとペンの先にカートリッジが装着されています。
⑤注射部位を確認し消毒する
まず注射部位を確認します。皮下注射ではよく腹部などにも打ちますが、この薬剤の説明書には上腕外側部と大腿外側部への施行指示があるため、今回は大腿外側部に打ちます。
部位の確認ができましたら消毒用アルコールにて注射部位を消毒します。
ちなみにこのキットに消毒薬は付属しておりませんので別で準備する必要があります。
⑥注入ボタンを押さないようにしてペンを垂直にあてる
親指で上部の注入ボタンを押さないように注意し、ペンを患部に対して垂直にあてます。通常は画像のように赤丸部分に隙間が空いています。
⑦ペン中間部の隙間がなくなるまで強く押し当てる
次に赤丸部分の隙間がなくなるまで力を入れてペンを強く押し当てます。しっかりと隙間が埋まらないと針が出てきませんのでとても重要な工程になります。思ったよりも力が必要ですので気を付けてください。
⑧注入ボタンを押して5秒待つ
しっかりと隙間が埋まるように押し当てた状態で上部の注入ボタンを押します。すると「バチン」という音とともに針が飛び出し、皮下組織まで刺入されます。この状態のまま5秒間待ちます。その間にゆっくりと薬液が注入されます。
個人的な感想ですが、針が刺さる時の痛みは意外と少ないです。
⑨ゆっくりとペンを抜く
5秒間経ったらゆっくりとペンを患部から抜きます。するとペン先から針が出ている状態になっています。ここで針が出ていない場合は成功していないということなので順序⑥からやり直してください。
⑩カートリッジにペンを戻し反時計回り(左回り)
針の出た状態のペンを元のカートリッジに奥までしっかりと押し込み、今度は反時計回り(左回り)に回します。
反時計回りに回してから引き抜くと、針がなくなっており白い棒が出ている状態になっています。もし針が付いたままの場合はもう一度強く押し込んで反時計回りに回してください。
針を戻した後は必ずカートリッジの蓋を閉めてください。忘れないように気を付けてください。
⑪カチッと音がするまでペンを押し込む
最後にキットの左側にある穴にペンをカチッと音がするまでしっかりと押し込みます。あとはキットの蓋を閉めて完了です。これが注射を打つ際の一連の流れとなります。落ち着いて行えば難しくはありませんが、発作のある時は痛みが強くて余裕がないかもしれませんのでしっかりと予習しておくことをおすすめします。
効果の体感
注射後の効果は自分の体感では30分後くらいから効いてきた感覚があります。この注射は1日2回まで可能となっており、服薬を何もしていなければ2回目は1時間以上間隔をあけるようになっていますが、個人により体の状態は違いますので必ず事前に主治医と相談してから行ってください。
普段であれば発作ピーク時は這いつくばって痛みで動けないまま嘔吐をしている状態ですので全く薬も飲めず、地獄の苦しみが続きます。ですがこれがあるおかげで吐き気があっても薬を投与することが可能となり症状の緩和を図れます。これは自分にとってはとても画期的であり、今では少しでも安楽な生活を送るための必要不可欠なものになっています。
まとめ
今回は片頭痛・群発頭痛の治療薬の一つである「イミグランキット皮下注3mg」の紹介でした。
頭痛発作時には吐き気を伴うことが多く薬を飲めずに困っている方も多くいらっしゃると思います。そのような時にとても有用な治療方法だと思います。「注射を打つ」という響きに敷居が高く感じられる方も多いと思いますので、実際の施行がどのような感じであるか参考になれば幸いです。
今回は皮下注治療薬の紹介でしたが他に内服薬以外では点鼻薬などもありますので、主治医としっかりと相談し自分にあった治療を決定していくことをおすすめします。一人でも多くの方がこの疾患を乗り越え、安楽な生活を送ることができるよう祈っております。ともに頑張りましょう。